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「足利織物」の生き残りをかけて戦う若者たち「ガチャマン・ラボ」代表の高橋仁里さんインタビュー


今回紹介する「ガチャマン・ラボ」代表の高橋仁里さんが繊維の世界に入ったきっかけは、足利市内で伝統的な織物技術の伝承や織機の維持のために、自らのリスクで糸を作り、織機を動かしている職人さんとの出会いでした。

足利織物が直面する現状

昭和初期には「足利銘仙」とよばれる絹織物で全国的にも有名になった足利の織物ですが、その後時代の流れとともに市内の織物産業も廃れ、今や存亡の危機にあるのが実情です。
地場産業の衰退は決して足利だけで起こっている事象ではありませんが、「足利市の織物が衰退した原因は大きく2つで、産業自体の空洞化が進んだこと、手間やコストを惜しんだモノづくりに向かってしまったこと」だと高橋さんは語ります。産業の空洞化が進めば事業者数も急速に減少し、事業者数の減少はブランドの衰退や技術の消滅、そして更なる産業の空洞化へとつながっていく。
このような負のスパイラルに陥った産業がかつての勢いを再び取り戻すことは容易ではありませんが、世界レベルのモノづくりを手掛ける職人さんが未だ残るこの足利では、足利織物の「生き残り」をかけた活動が「今」なされなければ、産業そのものが消滅する日も遠くはないのです。

新たな取り組みで目指すこと

多くの課題に対する「答え」を探る日々の中、産地の高度な技術を使って織られた生地を欧州トップメゾンのオートクチュールに直接提案するなど、足利の織物業界に新たな一石を投じている高橋さんが今新たに取り組んでいるのが、クラウドファインディングを使ったプロジェクト。「READY FOR」のプラットフォームを使って欧州コレクションへの提案生地製作に必要な資金の一部を賄う取り組みですが、資金もさることながら、このプロジェクトを通して足利の織物を知ってもらうこと、さらに足利繊維の質の高いモノづくりに対する認知を広めることを目指しているのだそう。

>>> READY FORのプロジェクトページはこちら(編集部追記:募集は終了しています)

「READY FOR」のページ上では複数のアイテムを紹介していますが、「中でも高橋さんオススメの一品はどれですか?」と聞いてみたところ教えてくれたのが、「2013年新作のウールストール」。このストールは、高橋さんが世界レベルの技に感銘を受け、業界では「シルクの神様」として全国的に有名な足利の職人さんが手掛けたものなのだそう。今回産地復興のPR素材として特別に出展されたこの職人さんの製品は、通常は欧州のトップブランドや高級百貨店に販売されるため、この価格で日本の消費者が手に取ることはあまりない …と聞けば、それだけで質の高さがうかがえます。1枚で多彩な表情を出すために織り組織を工夫しているこのストールの特徴は、2種の織り組織(平織・潜り格子)を1枚仕立てにしていることと30パターン以上に及ぶ配色のバリエーション。質・価格・バリエーションすべてにおいて高いレベルを持ったこの製品を直に手に取って、足利織物の質の高さと職人の確かな「技」を感じて欲しいと、高橋さんは語ります。

繊維技術者の高齢化と後継者不足が続けば、今までこの町にあった「技(わざ)」がゼロになってしまう。これは決して遠い未来の話ではなく、現在進行中の問題です。
しかしながら、いまこの町の繊維産業の「生き残り」をかけて立ち上がり、活動を始めている人たちがいることもまた事実であり、そこにはわずかながらも力強い希望の光が灯されつつあります。

>>> READY FORで足利織物の復刻を支援したい方はこちら(編集部追記:募集は終了しています)

ガチャマン・ラボFacebookページはこちら


※この記事に掲載されている情報は取材当時(2013/10/17)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。

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satoko motegi

足利生まれ、足利育ち。坂西地区出身・在住。 大学・社会人時代は神奈川と東京で過ごすも、長女の出産を機に足利に戻り、現在は東京(職場)と足利を行ったり来たりの生活を送る。 二児の母。

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