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足利市民プラザ演劇祭2013 田沼孝之さんインタビュー


今回は10月12日、13日に『厄年の味方』の公演を控えた天才ヒポザウルス代表の田沼孝之さんにお話を伺いました。

―― 天才ヒポザウルスを旗揚げされた経緯は?

田沼孝之さん(以下敬称略): 初め私は東京で役者をやってたんですが、喰えなくて帰ってきたんです。そしてまず足利の劇団に入ったんですが、だんだんと自分のやりたいことが出てきてしまいまして、そこで自分のやりたいことをやるには自分で劇団を作ってしまうのが一番だということになって1993年に旗揚げをしました。
「芝居といえば東京で」ってのがあるんで、こっちの若い人たちが東京に出て行ったりするのも面白いことですけど、逆に地方からも面白いものを発信できるんじゃないかという思いもひとつのきっかけでしたね。
そして市民プラザの演劇大学も含めて色んな講師の方々と会っていくうちに、地方からも良い作品が発信できないことはないと、はっきりわかったので、そんなのができれば良いなという思いで今までやってきています。

―― 長年オリジナル作品を上演し続けておられますね

田沼: 特にオリジナルにこだわっているわけではないんですが、できるだけオリジナルでやっていこうとしています。オリジナルだからこそ発信できるものがあると思うし、そこにこだわりはあります。あとは自分のアイデアへの挑戦ということですね。

―― 自ら本を書き、演出し、出演してと、ほとんど全てを見ておられるのは、これもこだわりですか?

田沼: いろんな部分に関わっているのは、一連の流れをひとつのカラーにしたいからなんです。芝居作りのそれぞれのセクションをひとつにまとめることで同じカラーを作っていくんです。 たとえば、公演日にお客さんが最初に出会うのは受付ですよね。まずそこから楽しい気分でうちの劇団の空気を吸ってもらえるようにしたいのです。同じような理由でうちはいつも芝居が終ったあと出口でお客さんをお見送りしていない。素に戻った役者をお客さんに見てもらうことのないようにというか、家に帰るまで芝居を持ち帰っていただきたいという思いがあるからです。

―― 大ホールより小ホールがお好きなようですね

田沼: 小さい小屋の方がお客さんとの距離が近く視線の高さが一緒なので、お客さんの反応や表情がダイレクトに見られますからね。もう一つは役者の息遣いや視線にこだわって作っているので、小ホールの方が視線や細かい表情をお客さんに観てもらい易いということがあります。お客さんに近いということで、役者もお客さんも同じ空間の中で同じ空気を作っていけるのが好きで、小ホールにこだわっています。

―― お客さんとの距離は、大切なんですね

田沼: 役者から出たものが、お客さんにダイレクトに伝わってその反応もダイレクトに返ってくるので、台詞や間を変えながら空気を変えるのもしやすくなりますね。でも難しさもあって、粗もはっきり見えちゃいます 。そういう面白さと怖さとの背中合わせみたいなところでせめぎ合いながら、どういうものを作ってゆくのかが面白いっていう気がしますね。

―― 他の劇団の演出をされたり出演もなさっておられますが、他劇団に関わる面白さとは?

田沼: 他でやることによって、また違ったカラーの作品ができることが面白いんです。うちで私が書いている作品は天才ヒポザウルスのカラーになるもんですから、違う作品もやってみたいという欲求があるんですね。
またいろんな劇団にはいろんな面白い役者さんがたくさんいます。そういう役者さんを演出目線で見ると、この人ってこういうことをしたらもっと面白いんじゃないかなと思うことがあるんです。よその役者さんと一緒にやることで、そういう部分を見れるのはとっても面白い。うちのカラーでない作品を作ってゆくことは単純に面白いだけでなく、いろんなものが見えるってのが良いんですね。お互いに興味や影響を受けながら、その過程でまた違ったものができていったりすると、それがさらなる喜びになったりします。そういう意味で他のところでやったり、うちとは毛色の違う作品をやったりすることに対する興味ってのはすごくありますね。

―― 今回上演されるのは、どのような作品ですか?

田沼: いつものようにとにかく笑ってもらってスカッとしていただく作品になります。

―― 田沼さんにとって演劇とはなんでしょうか?

田沼: 何でしょうねえ。正直何なのかと言われるとわからないというのが一番素直な答えになるんですが。もちろん初めは好きだからとか興味があるからってところから始めているんですけど、実際芝居の中でわかったこととか知ったこととか出会った人とかも含めて、自分にとっては全て繋がっていて影響を受けている気がします。たとえば仕事や家庭のことだったり、友達との人間関係だったりですね。もちろんアマチュア劇団だから、周りから見るとどうしても趣味の延長と見られている部分は多々あると思うんです。それは間違っているわけではないんですけど、芝居作りのプロセスや段取りなどは特に仕事面での考え方に強く影響していると思います。そういう意味では、私にとって演劇とは生活のバイブルでしょうか。

―― ありがとうございました

(聞き手/「あしかがのこと。」編集員:岩澤)

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足利市民プラザ演劇祭2013
天才ヒポザウルス第13回公演『厄年の味方』
日時:

  • 10月12日(土)19:00開演
  • 10月13日(日)14:00開演

場所:
足利市民プラザ小ホール 
天才ヒポザウルス 


※この記事に掲載されている情報は取材当時(2013/10/03)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。

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