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小俣幼児生活団

園内に足利の160年が共存。子どもたちが歴史と文化に触れて育つ小俣幼児生活団


足利市小俣町に昭和24年創立の「小俣幼児生活団」という私立保育園があります。園内には大自然と共にとても古そうな日本家屋が数棟並んでいます。これらは足利市の国登録有形文化財建造物に登録されている建物です。「かつての私たちの自宅で先代より伝えられている嘉永4年(1851年)という建築時期からすると約160年前の建物になりますね」と園長の大川眞さんと園長母の大川繁子さんは話します。大川家は明治初期まで織物業・糸商などを営み、足利が銘仙五大産地として有名になる以前より織物の街足利を支えてきたとも足利織物史に記されています。

左から大川眞園長、園長母の大川繁子保育士

左から大川眞園長、園長母の大川繁子保育士

旧園舎は無くなっていたかもしれない!?

文化財7棟を含む建物は足利市の歴史を伝える貴重な物として残されていますが、取壊しの危機があったと園長はいいます。「平成14年頃、乳児棟等が老朽化を迎え、建替計画をしたところ敷地内にある主屋など、江戸時代から残る古い建物が面積、築年数などに関し保育園としては不適当なものと国に判断されてしまった。しかし、織物の街足利とも縁深く昔より残存する日本建築建物を文化遺産としても残すべきとの声もあり、平成15年に文化財に登録、今に残されることになった」と園長は当時の様子を話します。

大切なコトと大切にするモノ

「新旧問わず物を大切にする、せっかく残る歴史や文化や自然を子供たちとその親へも触れさせることは園を託された私の命である」と園長は語ります。園内の文化財は建築当時のままの姿で残されている建物もありますが、外観や柱などはそのままにして内部を改装し、ミーティングルームや図書室またはプレイルームといった保育園の一部施設としても利用しています。ひな祭りの時期には文化財建築当時より作られたひな人形を飾り伝統も重んじているそうです。

新保育棟等は平成16年度栃木県マロニエ建築賞景観賞、同年度足利市建築文化賞を受賞

新保育棟等は平成16年度栃木県マロニエ建築賞景観賞、同年度足利市建築文化賞を受賞

足利の歴史と自然に溶け込む新園舎

園内の歴史的な建物を抜けると、園内全面建替計画により平成16年に建築された保育棟が建ち並びます。これらの建設には園長はもとより卒園生でもある建築家の方々の協力があり計画が始まったといいます。文化財建造物の日本屋敷群や足利の自然の残る園庭の景観を壊さぬようなデザインを心掛けたそうです。「自然そのままの園庭は夏には緑を秋には紅葉と四季折々の色使いを間近に子供たちの目に映してくれる、これもまた自然のありがたさだと思う」と園長は話します。

新園舎のコンセプトは「もう1件の自宅」

園長は保育棟等の計画では保育と子供と建物の関係を大切にしたといいます。「園舎で生活するのは子供たち。その子供たちが外では自然と触れあい、中では温かみのある自宅にいつでもいる感覚を味わえるものでないとならない。子供が安心できなければ、親も安心できない。これが一番のコンセプトだった」この様に園長は語ってくれました。保育棟も一棟ではなく分棟として並べ、隣のクラスは近所のお家といった雰囲気を大切にしているそうです。(記事執筆:吉田博美、デスク:山田雅俊)

小俣幼児生活団 施設情報

場所小俣幼児生活団
栃木県足利市小俣町1412

※この記事に掲載されている情報は取材当時(2017/02/11)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。

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