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日本のこころ ―相田みつを・入江泰吉、書と写真の世界―(篠原学芸員へインタビュー)


足利市立美術館では、開館20周年記念特別展として「日本のこころ ―相田みつを・入江泰吉、書と写真の世界―」を開催しています。展覧会開催にあたり、学芸員の篠原誠司さんにお話を伺いました。

どんな展覧会ですか?

今回の展覧会は、相田みつをと入江泰吉の二人展です。相田みつをについては多くの方がご存じかと思いますが、「入江泰吉」という名前は初めて聞いた、という方もいるかもしれません。入江氏は特に関西では有名な写真家で、奈良の寺社仏閣や自然を撮った写真が数多く残っています。70年~80年代に奈良の観光ブームが起きましたが、当時雑誌やポスターなどに使われた写真は、その大半が入江氏の作品だったと言ってよいでしょう。
今回の展覧会ではこの二人の芸術家の作品、すなわち相田みつをの書と入江泰吉の写真を、それぞれ対峙させる形で展示しています。

相田みつをと入江泰吉、この二人をとりあげたのはなぜですか?

 相田みつをと入江泰吉の間に直接の深い交流があったわけではありません。むしろこの二人はほとんど接点がなく、生涯に一度だけ、鎌倉の円覚寺で言葉を交わしたことがあった…という話が残っているだけです。直接の人間関係は「無」に近かった二人ですが、ひとつだけ、相田氏のアトリエに入江氏が撮影したと思われる仏像の写真が掲げられていたという点で、深い接点があるのです。相田氏のアトリエには東大寺「月光菩薩」の写真が掲示されていたそうですが、相田氏はこの写真に向かい、朝に晩に手を合わせていたそうです。相田氏にとってこの写真の菩薩像は、菩薩そのものだったと言えるのではないでしょうか。そしてその写真を撮ったのが入江氏――このような話があったことから、今回の二人展が企画されました。

数多くの書と写真が展示されていますが、なかでも見どころはどこですか?

 展覧会は3つの部屋で構成されています。第1部の部屋には、相田氏と入江氏の代表作と若い頃の作品、さらに彼らの愛用の品々が展示されています。相田氏の楷書作品や、入江氏の非常に緻密な撮影ノートなどは珍しいのではないでしょうか。

第2部の部屋では、企画展のメインである二人の作品を一対にした展示を見ることができます。入江氏の写真はその色彩や構成の妙で見る人を圧倒しますが、そこに相田氏の書が加わることで、両作品がさらに深まります。入江氏は非常にこだわりの強い方で、自分のイメージする写真が撮れる"ベストな瞬間”が来るまで、シャッターを押さずに何日も待ったそうです。そして、いざその瞬間が来るとバシバシと撮り続ける。そのように撮られた写真だと思ってみると、その美しさにも一層凄味が増します。

 第3部の部屋は、相田氏の故郷である足利、そして入江氏の故郷である奈良についての思いを表した作品を展示しています。相田氏が書いた「足利工業大学校歌」は、普段は足工大の学長室に飾られているものを、今回特別にお借りすることができました。

『ひとつのことでも』『めぐりあい』など、足利の人にとってはなじみの深い書も見ることができます。入江氏の写真は、構図を好んだという『水に写る東塔』や、雪景色の美しい『雪の東大寺南大門』などがあります。

 今回の企画展は、相田みつをと入江泰吉という二人の稀有な芸術家の作品を、独自構成でまとめたものです。皆様のお越しをお待ちしています。

日本のこころ ―相田みつを・入江泰吉、書と写真の世界―
開催期間:2014年4月12日(土)~6月15日(日)
休館日:月曜日
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
観覧料:一般800(640)円/高校・大学生600(480)円/中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金です。
*6月15日(日)は「栃木県民の日」協賛で観覧無料となります。

主催:足利市立美術館、入江泰吉記念奈良市写真美術館
協力:公益財団法人足利市みどりと文化・スポーツ財団、東武鉄道(株)
特別協力:相田みつを美術館


※この記事に掲載されている情報は取材当時(2014/06/05)のものです。お気づきの点があれば、「あしかがのこと。」編集部へお問い合わせください。

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satoko motegi

足利生まれ、足利育ち。坂西地区出身・在住。 大学・社会人時代は神奈川と東京で過ごすも、長女の出産を機に足利に戻り、現在は東京(職場)と足利を行ったり来たりの生活を送る。 二児の母。

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